【コラム】「知恵が求められる時代に必要な力」

2030年以降、日本の総人口は全都道府県で減っていく。65歳以上の割合が全てで30%を超え、そのうち43の道府県では75歳以上の割合が20%超に達する。そして東京や埼玉、千葉、神奈川、愛知などの大都市圏では、75歳以上の人口が2015年と比べて1.5倍以上となり、高齢者の人口が大幅に増える。

 

これは先月末に、国立社会保障・人口問題研究所が「2045年の日本の人口」を地域ごとに推計した結果を公表したもの。こうした人口動態の変化は、労働人口の減少、高齢者介護の増加といった社会課題につながっています。そして総務省の『平成26年版 情報通信白書』では、2013年には15歳~64歳という働き手の人口(労働力人口)が8千万人を下回り、2060年には約4千4百万人まで大きく減るとの予測です。

 

このままいくと日本のGDP(国内総生産=国内で1年間に生産された商品やサービスの付加価値の総計。おおまかには「労働力人口×労働時間×労働生産性」)は減少するでしょう。経済が成長するためには、労働力と技術革新、資本の3要素が大事ですが、働く人が減り続けていけば2040年頃に日本は先進国から転落するだろうともいわれています。

 

 

そこで日本政府は労働力人口の減少に対して、少子化対策や女性・高齢者の活用、外国からの移民受け入れ、AIやロボットの導入などを議論しています。ちなみにアメリカはこれまで毎年100万人の移民を受け入れてきたそうですが、経済成長率の1/3ぐらいは移民による経済効果といわれています(ドイツでは毎年75万人、日本は15万人)。

 

ドイツでは小学校から大学までの学費は原則無料だとか。そして、基礎教育を経て自分が志望する職業ができるような教育(職業教育)まで、個人の負担はかなり軽いそうです。

 

“ところで経済的弱者への支援方法には、「空腹を満たすための食糧を提供する」方法と、「魚の釣り方を教える」方法があると言われる。後者のほうが持続可能性が高いのは明らかだ。そして、ドイツのシステムは後者に似ている。国や社会が「釣りができる人材」になるまで支援し、結果的に社会の持続可能性の高さにつながる構造だと思う。”

教育が職業に直結、ドイツ社会の「雇用哲学」 (高松平藏氏 :ドイツ在住ジャーナリスト)東洋経済オンラインより引用)

 

 

残念ながら只今の日本社会は「釣りができる人材」を育てるのではなく、一時的に「空腹を満たすための食糧を提供」 している状況のように見えます。様々に社会構造の疲弊がみられる中、社会全体で前者へ転換していかなければ持続性のない社会になってしまいそう。

 

さて人材について、最近の教育現場では「2020年からの新大学入試」や「高大接続改革」のことが話題になっています。しかし、試験方法の変更内容や学習要項の違いといった表面のみでなく、そもそもなぜ今こうした変更が行われるのかという背景や目的を理解することが大切。上記で話してきたような社会の大きな変化が、教育改革の必要性にもつながっているからです。

 

学生を強制的に枠へはめるというこれまでの授業から、「単に知識をデリバリーするのみではなく、学校の枠には収まらない強力な“腕力”を育てる仕組みが必要」(東京通信大学の村岡洋一学長)。まさにこれからの教育を一言で表した言葉ですね。

 

村岡先生曰く、「あることについて知っている」という知識を「活かしながら新しいものを創る」ことができるという知恵。そして、社会の全体を俯瞰する視野を持ち、様々な個性を持った他者と良好にコミュニケーションをとりながら問題を解決できるような力を養っていくことが、これからは大切。「サス学」では従来から大切にしていることですね。

 

 

“たとえば、鉄道会社の列車運行システムの開発では、車両の配置から、ダイヤの管理、それに伴う信号機の操作、運行管理など、多種多彩な処理を要求されます。このような巨大なシステムでは、特定領域の専門家だけでは全体を設計できません。

 

また、そのシステムが鉄道会社や利用者、ひいては社会全体のニーズを取り込んでいることも大切です。社会や産業の仕組みを理解した上で情報システムを設計できる人、組織での個人特性と集団力学を理解して協力関係を構築できる人など、知恵を働かせ「異分野同士の融合」をできる人材になる必要があるのです。“

知識を生かす「知恵」。シンギュラリティ時代の生き方(村岡洋一氏) 朝日新聞社メディアビジネス局)

 

この力は、ある時だけ学べば身につけられるものではありません。自分を取り巻く社会や環境の変化に応じながら、高度に適応させるよう学び続けることが大事。私は昨年この事をふまえながら、「サス学」の学びを希望する高校生たちとゼミ形式にて現場で向き合ってきました。そして今年度は、「サス学」手法を深化させた知恵を学ぶシステム構築を目指していきます。

 

(執筆者:岸 和幸(「サス学」マスター))

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