【コラム】「健全な森林は人間の健康を支える(「サス学」アカデミー2018開催!)」

こんにちは、森のクマさんです。今年も大盛況となった「サス学」アカデミー(三井物産主催)。参加した小学4~6年生たちは連日の暑さにも負けず、今回のテーマ「みんなで未来の健康生活を考えよう」を熱心に取り組みました。開催期間の2日目には三井物産さんの亀山山林へフィールドワークに行き、そこで「森と健康のつながり」を身体で感じる素敵な体験ができました。

 

ところで「フィトンチッド」って聞いたことがありますか?「ボーっと生きてんじゃねーよ!!」と、NHKとは思えないセリフで話題の番組「チコちゃんに叱られる」で紹介されたので見た方がいるかもしれませんね。

 

植物が出す「フィトンチッド」(抗菌性のある揮発性の有機化合物)は、人間の傷をなおし、かぜや気管支炎などの薬になる他、除菌・抗菌の力が強く、人間の病原菌にきく抗生物質に利用されています。「フィトンチッド」の効能は針葉樹の森へ午前中入るとより多く受けられるそうですが、今回はまさにそれだったので効能ばつぐん!

 

また、植物が光合成を行う際に、木の葉から不要な水分を出して周りの熱をうばい温度を下げるので、森は「緑のエアコン」とも呼ばれています。参加者のみんなは亀山山林で、森が人間に与えてくれるさまざまなプラスの健康効果を五感で感じながら、後半のアウトプットづくりのヒントをいろいろと得ることができたようです。

 

『私たち人間の生命を支える水、食糧、大気、気候は生態系(森林、河川、海、草原など、あるまとまりを持った自然環境と、そこに生息するすべての生物で構成される空間)の働きなしには考えられません。

 

けれども、自然環境の劣化・荒廃による水の不足・汚染、砂漠化や土壌侵食などを原因とする食糧不足、さまざまな排出物による大気汚染によって、生命を脅かされている人々が地球上に少なくないのです。人間の健康の土台は、自然環境の保全にあります。

 

想像もつかないほどの多様な生物種の宝庫である森林は、「自然の薬局」とも呼ばれています。なぜなら森林はさまざまな医薬品に使われる成分を提供する源だからです。例えば、ガン、心臓病、高血圧、炎症、さまざまな重大感染症など深刻な疾病に使用される医薬品の成分は、自然が提供してくれるのです。』(引用元:「森と健康」)

 

人間の体と心の両方に対しての健康効果を与えてくれる森林。ちょっと疲れたなと感じたときは、近くの森林にふれて心身をリフレッシュするといいですね。森林総合研究所の実験で興味深いものがあります。都内の大手企業に勤める37~55歳のうち、ストレス状態にある12名の男性会社員を対象に、三日間、森林遊歩道を、2時間ずつ散策した結果。

 

二日目と三日目に血液検査をし、ふだんの状態と比べたところ、がん細胞を破壊するナチュラルキラー細胞(NK細胞)の元気度を示す「NK活性」が二日目で26.5%、三日目で52.6%上がり、また血中のNK細胞の数や、「抗がんたんぱく質」も増えていました。これは樹木が発散する「フィトンチッド」が緊張を和らげ、NK細胞の働きを抑えるストレスを低下させたことによるもので、森林浴による効果と考えられます。

 

余談ですが、私は大学卒業後にシステムエンジニアとして約12年間働いていました。ところが1998年に屋久島のある山であやうく遭難しそうになり、そこで人間の生命と自然環境とのつながりに気づかされます。そして、当時C.W.ニコルさん(作家・ナチュラリスト)が副校長をしていた学校で自然環境保全を学びながら、個人的にフィールドワークで日本や米国の森林に行き保全の状況と問題点・解決方法を体感しました。

 

その後縁あって(株)リコーに入り、環境経営活動の一環として生物多様性保全の推進を担当(2001~2011年)。世界各地の森林生態系を保全するプロジェクトを進め、ニコルさんが取り組んできた「アファンの森」保全活動も支援。

 

世界各地で自然に関わる仕事に取り組んでいたニコルさんは日本の自然に魅了され、1980年長野県の黒姫に居を構えました。作家として活躍する一方で、エッセイや講演を通して環境問題に積極的に発信し続けています。ニコルさんは、地元で幽霊森と呼ばれていた暗く荒廃した土地を少しずつトラスト(買取って保全すること)し、知り合いの森の達人と協働しながら荒地に植樹を行い、腐り曲がった木を整理し続けました。

 

その結果、木々の間から陽光が差し込んで地表まで届き、野生の動植物が共生できる豊かな生命力あふれる明るい森に再生して健全な生態系の循環が取り戻されたのです。 森の中で話をしていたある時のこと、ニコルさんは自分の師匠であるどろ亀先生(高橋延清氏:森林学者、東京大学名誉教授)の言葉を教えてくれました。

 

『森林には公益機能と経済機能がある。公益機能とは、環境を保全・維持すること。つまり二酸化炭素を吸収して酸素をつくり、水を貯え、生物が生きられる環境を維持することである。また経済機能とは、木材をはじめとした林産物を提供し、社会に役立てることである。そして、森林は人間がどう取り扱うかで良くも悪くもなる。』

 

ところで最近は、国産の木材を使ったオフィスや店舗、駅などが増えてきています。天然の木の生み出す穏やかな空間に人が集まり、コミュニケーションの活発化などの効果がみられるといいます。耐火性能など技術の進歩で、柱など使える範囲が拡大していることもこうした動きを後押し。

 

国産材振興の流れも追い風に、木の空間は住居から公共の場へと広がっているようで、JR秋田駅では秋田杉など家1軒分以上の木材を天井や床、壁に使った結果、ブナ合板の椅子やロッキングチェアでくつろぐ人でにぎわい、駅にいる人の滞留時間が従来の倍以上になり、人が集う風景が日常になってきたそうです。(引用元:日経新聞2018.2.3)

 

日本はフィンランドやスウェーデンに次ぐ世界第3位の森林国。経済産業省の試算では、2030年までに二酸化炭素の排出量を日本全体で26%削減しなければならないのですが、森林の有する多様な機能を活かしながら私たち人間の社会をより豊かにしていくさまざまな取組みが求められています。

 

今回の「サス学」アカデミーで発表された5つのグループの「未来の健康の森」はどれも大変すばらしい構想となりました。森が持つ健康の効能を都市の問題解決へさまざまにつなげたアイデアは、どれも人間と森林との距離をぐんと近づける構想で、将来の実現を期待したいと思えるものばかり。その様子は後日、三井物産さんのHPに公開される予定ですので、ぜひご覧ください。

 

三井物産さんは、北海道から九州まで全国74か所に合計約4万4,000ヘクタールの社有林「三井物産の森」を保有しています。社有林の広さは何と!東京23区の約7割、日本の国土の0.1%の面積にも相当するそうで、長い年月をかけて守り大切に育てています。

 

今回の「サス学」アカデミーでは、社有林を管理している三井物産フォレストの方々に森でいろいろお世話になり、参加した子どもたちは大変喜んでいました。

詳しくはこちら→https://www.mitsui.com/jp/ja/sustainability/contribution/environment/forest/index.html

 

(執筆者: 岸 和幸(森のクマさん))

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