【コラム】「アリに学んだ成田空港」

こんにちは、森のクマさんです。

今年の夏も「サス学」アカデミー(三井物産主催)が開かれます。

 

今回のテーマは、「モビリティ」。未来の乗り物・交通のインフラなどに

ついて、ユニークな発想でアイデアを創り出します。  
私もファシリテーターとして、全5日間運営をサポートします。

 

 

「モビリティ」とは、日本語でいうと「動きやすさ・移動性・機動性」。

交通の分野では、人が社会的活動のために交通(空間的な

移動)する能力を指します。 

 

それでは、「人の移動」に関連して、日本を訪れる海外からの

人たちのことと、日本の国際空港の話をしてみましょう。

 

日本政府は「観光先進国」を目指して、訪日の外国人旅行者数

の目標を、2020年4,000万人、2030年6,000万人と掲げています。

その結果、2018年時点で3,119 万人を突破し、2020年は

東京オリンピック・パラリンピックが開かれることもあり、4,000万人

を超えることが予想されています。

 

訪日の外国人旅行者の内訳をみると、トップは838万人の中国。

続いて、韓国753万人、台湾475万人、香港220万人と、

東アジア圏が4分の3近くを占めているのがわかります。

 

そして国別に日本を訪れた数の増加率を見てみると、近年増えて

いるのが東南アジア圏や欧州圏。

中でもベトナムは一番増えており、前年比26%増の38万人を

記録しています。伸び率の2位はロシアの22.7%増で9万人、

3位はイタリアの19.2%増で15万人となっています。

 

 

このように世界の様々な国の人々が訪れるようになりましたが、

迎え入れる国際空港は大忙しですね。

とりわけ入国審査では、急増する外国人に窓口が追いつかず、

長い行列ができる悩ましい状態にありました。

 

そこで成田空港では、ある生きもののコミュニケーション手段を

取り入れて改善をしたところ、審査の待ち時間を半分にすること

ができたのです。スゴイ!

 

実は成田空港では、東京大学の西成活裕教授の協力を得て、

「アリの行動習性」に注目し、人の働き方などに応用しました。

 

西成教授が言うには、『大きな餌を運ぶために大量のアリが移動

しても、行列で渋滞することはない。アリは地面に付けるフェロモン

を使って、伝言ゲームのように情報伝達している。横のつながりが

緊密なボトムアップ型の働き方だから、状況に応じて柔軟に対応

できる』。

 

成田空港はその改善策として2015年から、入国審査に関わる

航空会社、空港会社、法務省の3者の担当部門間で、情報を

きめ細かく伝達するようにしました。

 

具体的には、成田行きの国際便が出発した時点で、航空会社

が搭乗した外国人数を伝えるようにしたことで、成田到着までに

入国審査の開設窓口を余裕をもって増減できるようになり、

審査の待ち時間が半減したのだといいます。

 

(「500系のぞみ」写真元:朝日新聞)

 

『アリ社会は女王アリの指示を待っていない。人間社会も大規模

になるほどボトムアップの意思決定を重視すべきだ』との西成教授

の言葉に納得です。

 

このような生きものの優れた機能をマネして、技術の革新に結び

つけることを「バイオミメティクス」といいます。

カワセミのくちばしをヒントに設計された新幹線の先端部分や、

空気抵抗を減らすフクロウの羽をパンタグラフに応用するなど、

生きものの形や構造をヒントにしているのは有名です。

 

そして、最近注目されているのが、魚や鳥の群れが互いに

ぶつかることなく移動できる習性や、上記のアリのコミュニケーション

の手段。これらを研究して、企業の活動に取り入れています。

 

人間の大先輩である地球の生きものたちから様々なことを

学ぶのは、地球環境にとっても社会にとっても価値あるものを

創り出していくことにつながります。

今回のサス学アカデミーではどんなユニークで意義あるアイデアが

出てくるか、とても楽しみにしています。

 

(執筆者: 岸 和幸)

参考情報:「進化の扉、バイオミメティクス」日本経済新聞電子版

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