私教育新聞(2021年4月号)に、私立学校で「サス学」を本格導入した香川誠陵中学校・高等学校の取り組みが掲載されました。学校教育において「サス学」のどこに魅力を感じ、どのような可能性を見出したのか、そしてどのように活かすのか、「サス学」への期待や今後について、光田大介校長にお話を伺いました。
答えがひとつじゃないところが面白い。
他の授業では得られないものがある。
――「サス学」のどのようなところに魅力を感じたのですか。
2020年度から実施される新学習指導要領にSDGsが盛り込まれるということもあり、「サステナブルな社会を創る力を育むことを目的とした新しい学び」というものに興味を持ったのですが、何より、答えがひとつではないところがいいと思いました。“これが正解”というものがないので自由な発想が生まれますし、チームでひとつのテーマについて調べたり、話し合ったりするスタイルもいい。テーマも世界を視野に入れた環境問題や持続可能な社会づくりなど幅広い。今の中学・高校生が将来を考えるときに必要な視点がしっかり盛り込まれていて、これはぜひやりたい、やるべきだと感じました。
――ほかの教科の授業では得られないものがあると。
はい。大学進学というひとつの価値観に縛られることなく、芸術系に進む生徒や、海外志向の生徒がいてもいい。自ら学びたいことを発見し、学びたいことが学べる環境をつくり、将来の選択肢を増やすための支援も必要だと考えています。「サス学」もそのひとつで、生徒の視野を広げ、新たな興味、関心を引き出すために役立つと期待しています。
――「サス学」は小学生を対象に開発されたものですが、その点は問題にならなかったのでしょうか。
「サス学クラウドサービス」を提供しているジェイシー教育研究所のご協力を得て、少しアレンジを加えています。現在「サス学」の授業は、総合やロングホームルームの時間を使い中学生を対象に行っており、他に、中学・高校生が合同で行うクラブ活動のひとつ、エコ・ボランティア部でも活用しています。
保護者からの期待も大きく
学内の「サス学」講師を増やしたい
――「サス学」の導入について、保護者の理解は得られましたか。
PTAの役員会で「サス学」を紹介し、生徒にSDGsの視点を持たせたいという話をしたところ、思った以上の賛同を得ることができました。特に、幅広いテーマで一方的に講義を聞くのではなく、生徒自身が考え、グループワークが行われるという点が保護者にも好評でした。皆さん、教科学習も大事だが幅広い知識や視野を身につけることも必要だとお考えで、期待していただいていると思います。
―― 光田校長の目から見て、生徒の変化を感じることはありますか。
授業を見ていると、考えよう、発信しようというアクティブな姿勢が少しずつ強くなっているように感じます。穏やかな校風もあって、どちらかといえば自分から意見を言うよりも、人の意見を待つ生徒が多いのですが、そこは少し変わってきたように思います。「サス学」の授業では、誰もが自分の考えを自由に述べることができるので、その体験を通して、自分の意見を言うことに対するためらいや不安が薄れていくのではないでしょうか。同時に、人の意見や考えを聞くこと、意見交換することの面白さや大切さにも気づき始めていると思います。今後、生徒同士のコミュニケーションもさらに活発になっていくのではないかと期待しています。
現在、「サス学」講師の認定を受けている教員は1名ですが、今後増やしていきたいと考えています。将来のためにも、生徒がSDGsの視点を身に着けることの重要性は誰もが理解していますし、自らも学びたいという教員は多いので、期待しています。
いいと思うものは何でもやってみる
「サス学」を通して新たな取り組みも
―― 今後、「サス学」をどのように活用していこうとお考えですか。
「サス学」自体は、これまで通り中学生を対象に授業に組み込んでいくつもりです。ほかに、身近な事例を学ぶ機会として地域の企業などとの連携ができないかと考えています。県内にもSDGsに熱心に取り組んでいる企業があり、生徒が学べることも多いと思います。コロナ禍ということもあり、今は積極的には動けませんが、時期を見て取り組みを進めていきたいと思います。