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【サス学の現場より】3学期のテーマは「SDGs!」

2022.03.12

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1学期=水、2学期=ダイバーシティ(多様性)に取り組んできたネクスファで「サス学」を学ぶこどもたち。それぞれのテーマについて、時間をかけて掘り下げました。そして3学期は「SDGs」。この地球上で起きている全てのことがテーマの対象ともいえる、壮大なテーマです。

「SDGs」という言葉は、この1年でぐっと身近なものになったように思います。朝日新聞社が2021年12月に実施した調査では、「SDGsという言葉を聞いたことがある」と答えた人が76.3%に達したそうです。前年の調査(45.6%)から30ポイントも増え、急速に社会で知られるようになったことがうかがえます。テレビや新聞、WEBなどのメディアでも連日SDGsの言葉を目にするようになり、ネクスファでも昨年7月にEテレの番組に出演、2年前にサス学の授業で制作したカードゲーム「サステナブル・ゲーム」を紹介いただきました。

SDGsが2015年に生まれる前、2012年からサス学を実践してきた私たちとしては、SDGsの急速な広がりを喜ばしいものと感じる一方で、一過性の「ブーム」に終わってしまう危惧を感じています。街中でSDGsのバッジをつけたビジネスマンを多く見かけるようになりましたが、具体的な取り組みをどのくらい実行するのか、また「やる気」なのかが問われています。上記の朝日新聞の調査でも、「実際にSDGs に関する取り組みをしている」と答えた人は19.9%にとどまります。

さて、年明け1月4日からスタートした3学期のサス学。まずは地球で今起きている問題に目を向けるところからはじめました。「どんな問題が起きているだろう?」と問うと、温暖化、森林伐採、生き物の絶滅、飢餓・・・上級生を中心に、どんどん言葉が出てきます。また、オミクロン株、アフガニスタン、牛乳の廃棄など、最近ニュースで取り上げられていることを発言する子もいます。SDGsを数字でとらえるためのクイズでは、前のめりになって取り組む様子が見られました。

次に、SDGsがなぜ誕生したのか、歴史と背景を学びます。これまでも地球の課題に取り組む活動はたくさんあった中で、なぜこれほどまでにSDGsが認知されることになったのか。キーワードは「デザイン」と「キャッチフレーズ」。目を引く17色のアイコンと、わかりやすいピクトグラム。また「誰一人取り残さない」という言葉も、決して途上国だけの問題ではなく、世界全体で取り組むべきこと、「自分ごと化」することの大切さが広く受け容れられた要因といえます。ニューヨークの国連本部でお披露目されたSDGsのプロジェクションマッピングの動画をこどもたちと視聴。美しい映像と音楽に、こどもたちも引き込まれます。

では、SDGsの誕生から7年が経ち、どのくらい解決に向けて進んでいるのか。17のテーマのうち、解決したのは「0」。まだ1つも達成できていないのです。先進国とよばれる日本でも、たとえば2学期に学んだジェンダーなどは世界で120位とかなり遅れているテーマの1つです。他にも多くの課題を抱えています。

ここでこどもたちに質問。「SDGs、2030年までに達成すると思う人?」手が挙がったのは・・0人。「達成するわけないじゃん」「どうせ2030年になったら、別の○DGsができるんでしょ?」
こどもたちは、大人もどこか心の中で思っていることをズバリと直球で言葉にします。そうだよね、このままじゃ達成できそうもないよね。じゃあ、何のためにSDGsはあるんだろうか?どうすれば本当に達成できるんだろうか。“答えのない問い”についての対話を重ねます。

そんな折にみんなで観たのが「グレタ ひとりぼっちの挑戦」というドキュメンタリー映画のダイジェスト。スウェーデン人のグレタ・トゥーンベリさんが15歳のときに1人で始めた気候変動のストライキ。今では大きな社会運動になっています。彼女は何に怒っていて、そしてなぜそこまで行動できるのか。2030年という期限がきても、地球はその瞬間に終わるわけではありません。しかしながらこれ以上温暖化が進むと、地球環境は確実に後戻りできない「がけっぷち」の手前まで来ている。彼女からそんなメッセージを受け取りました。そして、1人でも変化が起こすことができるということも(2022年3月現在、NHKオンデマンドでこのドキュメンタリーを観ることができます)。

今回のアウトプットでは1人1枚のコラージュ作品を作ってもらうことにしました。寄付やSNSでの発信など、社会をよくする様々な“ソーシャルアクション”が挙げられる中で、「アートで表現する」というのもひとつの手段です。こどもたちには17のSDGsのテーマの中から複数選んでもらい、「現状の課題」と「2030年、こうなってほしい姿」についてのコラージュ作成をしてもらいました。テーマを選ぶ基準は、こどもたちに決めてもらいました。「一番やばい」「興味がある」「動物が好きだから」など、1人ひとり異なります。ポイントはなんとなく決めるのではなく、自分の心が動いたもの。そのため、家でSDGsの動画を観てきてもらったり、資料を読み込んできてもらったりしました。

2月24日。ロシアのウクライナ侵攻という衝撃的なニュースが世界中を駆け巡りました。私たちは今まさに、歴史が大きく変わる転換点の中にいます。こどもたちは既に発表に向けて制作をスタートしていましたが、急遽時間をとって対話しました。今、世界で何が、なぜ起きているのか。そして私たち1人ひとりに、何ができるのか?思考停止にならず、自分なりに考えることの大切さを話しました。

さて、あっという間に3月。発表会の日が来ました。新型コロナの影響もあり、休みが重なり思うように時間がとれなかった子もいます。それでも限られた時間の中で、「自分にできること」を作品とワークシート、宣言にまとめてもらいました。ぐいぐいと勢いよく作品づくりを進める子もいれば、うーんと頭をひねりながら、時間をかけて取り組む子もいました。サス学以外の時間にもやってきて作業をする姿も見られました。

こどもたちの声に耳を傾けていただき、SDGsと地球・社会の持続可能性について思いを馳せる時間にできたらと思います。

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